2011年3月18日金曜日

中世の随筆が使われる

 これだけの災害になるとコラムや新聞の 随筆はこの震災・原発事故のことを外して書くわけにはいかない。しかし敗戦以来の人的物的な大被害で月並みな文章など空々しく感じる。言葉を失うような被害に文字通り言葉を失うのだろうか、しかし、それじゃコラムや定期的な時事随筆など書いてる人の沽券にかかわるだろう。
 格調高い大新聞などはどのような書き方をするのだろうと、この間から注意深く記事を読んでいる。やはりというか、難しい時には歴史から引っ張ってくるのが一番無難であるという予想通り、中世のある随筆をコラムや新聞の随想に使っている。

 実は私も2日前にこの中世の随筆を使おうと思って家の書庫から探し出していたのである。ところが地震の被害に対する感想のブログに誰もかれも、この随筆を引用している。私が使うのが嫌になるほど。そして昨日はあの光り輝く朝日のコラム「天声人語」までこの随筆の引用である。
 万を超すかもしれぬ死者を出した今回の災害に下手に自分だけで文章を組み立てるより、歴史上有名な随筆に書かれた災害の文章を使う方がより重みを増すし、歴史の評価に生き残った文章だけに不幸なこととはいえ多くの人に受け入れやすいものとなる。

 とはいえ中世の随筆である。みんなが全く知らないようなものでは話にならない。ある程度内容を多くの人が知っている随筆、それも大災害の内容、そんなの
 「あったっけ?」
 あるんですよ。必ず高校の古典に入ってる教材が

 「ゆく川の 流れは 絶えずして しかももとの水にあらず・・・」

 「方丈記」 鴨長明筆、

 大災害の見本みたいに大火、竜巻、日照り、水害、飢饉、そして地震(ナイという)。流麗な古文でつづられ恐ろしい災厄の記述だが畳み込むようにすらすらと頭に入ってくる。悲愴美さえ感じる。
 本文を示すと

また、同じころかとよ、おびただしく大地震(おほなゐ)ふることはべりき。そのさま、世の常ならず。
山はくづれて河を埋み、海は傾きて陸地をひたせり。
土裂けて水湧き出で、巌割れて谷にまろび入る。
なぎさ漕ぐ船は波に漂ひ、道行く馬は足の立ちどを惑はす。
都のほとりには、在々所々、堂舎塔廟、一つとして全からず。
あるいはくづれ、あるいは倒れぬ。
塵灰たちのぼりて、盛りなる煙のごとし。
地の動き、家の破るる音、雷に異ならず。
家の内にをれば、たちまちにひしげなむとす。
走り出づれば、地割れ裂く。
羽なければ、空をも飛ぶべからず。
竜ならばや、雲にも乗らむ。
恐れのなかに恐るべかりけるは、ただ地震なりけりとこそ覚えはべりしか。
かく、おびたたしくふることは、しばしにてやみにしかども、その余波、しばしは絶えず。
世の常驚くほどの地震、二、三十度ふらぬ日はなし。十日・二十日過ぎにしかば、やうやう間遠になりて、
あるいは四、五度、二、三度、もしは一日、二、三日に一度など、おほかたその余波、三月ばかりやはべりけむ。

 コラムやブログに引用として使われるのももっともという気がする。再現するかのような言葉は一言でも被災者を傷つけるかもしれない。しかし850年も前の災害でしかも古文に託したのなら・・・

 で、やたらと最近の記事に「方丈記」の引用やこれのモティーフとしたものが多く、私も使おうと思って嫌になったりしたがそういいつつ、
 「お前も使っているではないか」

 方丈記にはインド哲学の影響が見て取れる。世界は4大元素に帰せられるそうである。(本文にちゃんと書いてある)
 風、水、火、地、である。そしてそのそれぞれの災厄がある。地震は「地」である。もしそうなら、原発事故はさしずめ「火」か、津波は「水」、そして残る「風」は、おそらく原発の発熱が止まらず放射能が広がり広域が死の原野に拡大が「風」、風のように見えず広がる。

 4つの災厄がそろったとき世の終わりか。

 しかし「方丈記」は終末の預言書ではない。最後は平安を迎える。興味のある方は続きを読んでみてください。

2 件のコメント:

てるゆき さんのコメント...

難しい物語ですね。

僕の先生のある青森出身の方が、おっしゃっていましたが、いつまでも、悲しんでないで、前に進んでいかなくてはとおっしゃっていました。

そのとおりですね。

でも、ナベツネと長嶋は、老害です。

まあ、おきゃくさんが、見に行かなければいいだけですが。

Unknown さんのコメント...

方丈記ですか・・。文学にほとんど興味のないので読めないのですが、悠久の歴史の中に大きな地震は起こっているんですね。もっと大きなスパンで考えると大陸が動いているんですから、当たり前といえば当たり前な出来事ですよね。不謹慎きわまりない発言ですが・・・。人間を中心に考えると災害ですが、地球から見ればいい加減人類にいじめられたので身震いしたくらいなのではないでしょうか?怖いと思えるのはこの地震が、地震兵器で起こされたものであったら言えることだと思います。最近日本で石油に代わる藻の発見が発表されましたが、この件との駆け引きが大きな原因になっているような気がします。簡単に言いましたが、この発見ってエネルギー革命なんですけどね。既存の石油産業はそのまま利用できる代替え油で、田んぼに水張ってればものすごい勢いで増えてくれる。日本の休んでいる田んぼの1/4で生産すれば日本のエネルギーはまかなえます。全部使えば日本はエネルギー輸出国になれます。これって石油利権者にとっては危機ですよね。昨今の中東情勢とか、大地震とか見てみますとその裏に見えてくるものがあるんですよね。ファンタジーですけど・・・。